真田丸第30話「黄昏」醍醐の花見と秀吉の負修羅扇

道東のたそかれ。
「誰そ彼」
あなたはだぁれ?
親から言われた一番残酷な言葉でしたが、こんにちは。
今回は秀吉の醍醐の花見等でした。
慶長3年(1598)3月15日。
今日太閤御所渡御せらる。女中御成あり、終日花御遊覧す。路次茶や以下の結構、筆舌に尽くし難し。一事の障害なく無為に環御せらる。(『義演准后日記』)

ドラマでは花咲か爺さんと化した秀吉ですが、
今回のヒットはこちら。

「なんで負修羅扇やねんっ!」
負けとるがな、あかんがな、とほほほ。
・・・なんのこと?
秀吉が手にしている扇。
実は、能で用いられる扇の図柄のひとつ、「負修羅扇」。
【能の曲目分類】
能は、シテ(主役)の性格で「神男女狂鬼」の五つに分類されます。
上から順に、一番目物、二番目物・・・五番目物。
1《神》「脇能」シテ:神。
別格の「翁」の脇に演ずるから脇能。天下泰平国土安穏を寿ぐ曲。
2《男》「修羅能」シテ:武将
勝修羅と負修羅がある。修羅道の苦しみを主に訴える曲。
3《女》「鬘能」(かづら/かつら)シテ:女人、公達、天人等。
いわゆる「能らしい」曲。
4《狂》「雑能」物狂・執心・怨霊等、他に分類出来ない雑多な曲の何でも箱。
芸尽くし『花月』、斬合『夜討曽我』、巫女『巻絹』etc.
5《鬼》「切能」シテ:鬼・天狗・天神・雷神・龍神など。
一度のプログラムで数曲ある時、最後に演じられる曲。
別名、鬼畜物。←情緒のない私、お稽古は今ここ。
例えば

吉野の花見で演じられた「源氏供養」は
シテが紫式部。《女》「鬘能」三番目物。

竹生島の龍神と弁財天が現れる「竹生島」は
後シテが神様なので、《神》「脇能」一番目物。

安宅の関を通る義経一行を描いた「安宅」は
武人だけど生身なので修羅道に落ちておらず、何でも箱の雑能。四番目。

飛火野の鬼神を描く「野守」は、そのまんま。《鬼》「切能」五番目物。
【修羅物ってなんだー】
修羅物のシテ・武人が行うのは戦。
戦には勝者と敗者があり、それぞれ「勝修羅物」と「負修羅物」。
「勝修羅物」
「田村」「箙」「八島/屋島」の三曲のみ。これ以外は全て負修羅。
用いる扇は、

勝修羅扇。図柄は「老松に旭日」
「負修羅物」
能は「平家物語」を題材にした曲が多い。
するとシテは、死後に修羅道に堕ちた源平の武将となります。

修羅道の苦しみと悲しみを訴える曲です。

『朝長』『実盛』『頼政』『忠度』『俊成忠度』『清経』『通盛』『敦盛』『生田敦盛』『知章』『経政』『兼平』『巴』。
どうでしょう。皆、「平家物語」の源平双方の敗者です。
用いる扇は、

負修羅扇。図柄は「立波入り日」
屋島の戦い、壇ノ浦の戦いと続けて敗北し、海に消えた平家の公達を連想するような図柄ですね。
こんな背景があったので、今日の大河で私が突っ込んだ

と、なるのでした。
いつも応援いただきありがとうございます。
ストーリーもぶっ飛ぶツボでしたが、思うに、大河の小道具さんに能の好きな人がいるのではなかろうかと。家康が持つ扇が、観世流の仕舞扇から勝修羅扇に変化したらビンゴです。しかしまぁ、顔色がいいね、っと安心していた三成達をどん底へ落とした茶々さんの「無邪気」。これは何なのでしょうねぇ。怖いわぁ。



お手数をおかけ致します。ありがとうございます。
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