豊国大明神と東照大権現と吉田家の梵舜日記。白鳥神社(7)

こんにちは。

吉田兼見の弟で、豊国神社神宮寺の別当であった梵舜が天正11年(1583)から最晩年の寛永9年(1632)まで綴った『梵舜日記』(別名『舜旧記』)。

豊臣から徳川へ移り変わる現場に居合わせた彼の日記は、資料としてとても面白いです。

国立国会図書館デジタルコレクションで読むことが出来ます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1367086/6


【秀吉と梵舜】

慶長3年(1598)8月18日、秀吉死去。



翌年4月16日。
自身を八幡神(新八幡/いまはちまん)として神格化するよう遺言した秀吉に与えられた神号は、「豊国大明神」。

この理由としては、八幡神は皇祖神であるから勅許が下りなかったとする説や、吉田神道による運動の結果とする説があるそうで。

ちなみに「大明神」とは、吉田神道では最高の神格。


洛中洛外図の一部。

方広寺大仏殿と豊国社(豊国神社)
大仏殿の後ろに秀吉の慰霊を祭る豊国廟と参道

※「廟」は墓ではなく神を祀るところ


豊国社の社務職は、吉田兼見の孫で養子の萩原兼従。
豊国社の神宮寺の別当は、吉田兼見の弟・梵舜。

『梵舜日記』からは、一生懸命お仕事に励む様子が伝わります。

が。



大阪の陣により、豊臣家滅亡。

『梵舜日記』《慶長20年(1615)7月9日》

「豊国大明神は大仏殿の内へ移し、社頭は悉く壊すことになった、って崇伝長老から内緒ないしょの使者が来たっ。たいへんっ。」



翌日。

「早朝、所司代板倉勝重に呼び出された。神官知行召し上げなのよ!」

8月16日。豊国社の鐘を智積院へ譲渡。
8月19・20日。神道護摩道具・神具等を吉田神社へ移動。
10月7日。豊国社の神官、悉く離散。



豊国社の社殿は破壊され、そのご神体は大仏殿内へ遷座。

梵舜の神宮寺は残り、寺領は安堵。(第一次棄却)


【家康と梵舜と、あのひと】

『梵舜日記』をちら読みしたり、解説を読むと、梵舜は家康に対して「改まって講義」したというよりは、御機嫌伺いに訪れた伏見城で、家康の方から神道、『日本書紀』、大嘗祭、式内社等について尋ねたようです。

家康の造詣の深さには梵舜もあたふた。

そんなご縁で呼ばれた駿府。


『梵舜日記』元和2年(1616)3月

家康、ご病気。

梵舜、病気平癒の祈祷。


『梵舜日記』同・元和2年(1616)年4月15日。

「崇伝様より、公坊様(秀忠)御用として呼ばれた。神道・仏法について尋ねられた。」

家康の葬儀についてのお話でした。


翌4月16日。

「家康様の事は、神道で行い、神位をもって久能山に遷座する事となった」


4月17日。

「家康様、巳の刻過ぎにご他界。夜に久能山へお移しすると崇伝様が駆けつけた。雨が降ってる。」


19日の日記には、葬祭について細かく記述。

梵舜は、吉田神道の流儀に基づき奉仕したのでした。

めでたしめでたし。



そうねー。

家康といえばー。



東照大権現、ですね。

吉田神道の最高の神格は、「大明神」。

何故「大明神」ではなく、「大権現」なのか?
答えは、梵舜・吉田神道が負けたのです。


久能山での葬祭の後、秀忠の前に家康の罹患以来奉仕した面々が揃った場において。

天海が、吠え出します。いわく

「南禅寺の僧崇伝といへる和尚、本多正純をかたらひ、吉田の庶流にて宗源の神道を学し者とこころをあはせ、唯一の礼儀にて久能山におさめ奉り、海師(天海)をばよせつけざれば、せんかたなくておはせしに(略)」(『両大師伝記』)

秀忠の前で、崇伝と天海、天下の二大僧が大喧嘩。



居合わせた人達はさぞ困惑したでしょうね。


「家康様の遺言は、山王一実流神道だった」by天海。

これは、いささか強引が過ぎる。



トドメの言葉は、

「吉田の名付けた豊国大明神を祀る豊国社は取り壊しの羽目になったわー!どうじゃー!」

・・・確かに。

かくして、最終的には、天海の主張が通り、山王一実流の神号「権現」を与えられた家康。

一年後に久能山から移された日光山において、「東照大権現」として祀られることとなりました。



これにより、徳川家康の祭祀は、天海の押す「山王一実流神道」が独占。


吉田神道は、天海の前に敗北。

では、吉田神道は衰退?

うんにゃ。



衰退したら、松平頼重がこんなお屋敷を造ってお迎えしません。



吉田家の人々、負けない。


白鳥神社へ戻れそうな次回へ、つづく。



参考文献
『吉田神道の400年 神と葵の近世史』(井上智勝著/講談社/2013)

「吉田神社」(wikipedia/https://ja.m.wikipedia.org/wiki/吉田神社)

『梵舜日記(舜旧記)』国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1367086/6

『舜旧記』(鎌田純一・編/八木書店/1999)


いつも応援いただきありがとうございます。
『梵舜日記』は、字体も読みやすく、余計な装飾のない文体の日記なので、拾い読みには最適。豊国社の別当だった梵舜は北政所との交流もあり、ねねさんの動向がわかることも興味深いです。僧でありながら、実家の神道の知識も兼ね備えた梵舜は、兄の兼見ほど派手ではなく、地道にこつこつとお仕事に励む人物だったようです。天海の迫力には、さぞかしびっくりしたでしょうねぇ。お気の毒に。

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No title

こんばんは~~~


>八幡神は皇祖神であるから勅許が下りなかったとする説

プラスαで八幡神は源氏の氏神。
さすがに秀吉では源氏に所縁がないので・・・

>『梵舜日記』

チラっと見たけど、変体漢文じゃなくて平易な文体で判りやすいですね^^
板倉さんがチョイチョイ出てくるし、雪が降ってたり、朝食を振舞ってたり、日記だけに臨場感あるなぁ

>崇伝と天海

司馬遼太郎の「城塞」で二人が喧嘩した場面は出てたけど、天海が勝ったことしか書いてなかったです。
こういう事だったんだ。

家康は秀吉を超えるべく、死後自分が神になるのを意識してただろうから、色々調べてたと思う。

初めは難しくて(@@)クラクラしたけど、だんだん繋がってきて面白い^^
クライマックスを楽しみにしてます♪
ぽちぽちぽちーーー☆

No title

つねまるさん、こんばんわー♪

長寿の天海さん、活躍していますね!
当時の100歳越えは現実的だったのでしょうか(◎o◎)

家康さんは「神号」を望んだのに、天海さんは秀忠をよく説得したものだと思います。
「明神は不吉」であるが決め手なのでしょうか。

秀吉さんは幽霊の存在を信じていたという時代ですから、大きな決め手になるのでしょうね^^


クラッシュくんは何処にでもオッチャンって感じで、かわいいです!
上方のオッチャンですね♪

時乃★栞様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

梵舜は、兄の兼見とは18歳差で、押せ押せの兄と違い、どちらかというと政治や祭祀の中心から離れていたようなので、日記も淡々としていていいですね。

秀吉が他界した頃は、葬儀の内容よりも「大仏開眼にいっぱい人が来た。すげー」って記していて。

豊国社が廃された後も誠心誠意お参りしている姿が好感持てます。

崇伝と天海の大喧嘩を目の前で見て、泣きそうだったんじゃないかと。

なんで吉田家本家じゃなくて僕がここにー!?って。
お気の毒な人です。

僧侶に神道の事を尋ねる、そして、僧侶はそれに答える。
何とも面白い光景に思えます。さすが吉田さんち。

piglet01様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

ぬくぬくとあっためていた『梵舜日記』をご披露出来て、幸せいっぱいです。

天海さんって、すごく苦手なのです。
大河ドラマのイメージが強すぎて。

100歳越え。

実は天海は老け顔なだけで、実はもっと若かったとか、そんなアホーなことはありませんねぇ。

「神号」を、大明神にするか大権現にするかの違いですから、秀忠は、もう、どっちでもいいよー(泣)な心地だったかも。

大明神は不吉である、は、大きいでしょうねー。
天海さん、自分の言葉にほれぼれしてたのではないかしら。
よく見つけた!わし、すごいぞ!とか?

クラッシャーたぬたぬ、淡路島の洲本八幡神社の子です。びんごー!
芝居の好きな、しばえもんたぬきさん。

上方のオッチャンは、憎めませんねー。うふふ。
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古典芸能の能楽の、謡と仕舞のお稽古ぐだぐだ日記も。

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