大切な文化遺産を維持するということ。世尊寺(その8)

こんにちは。

三井寺の三重塔の故郷、比曽寺(現・世尊寺)を訪ねて、一番の「よかった」は、住職さんにお会いできたこと。

訪問日はたまたま法事が行われていたので、お手がすく時間に再訪問しました。

まずは、


三井寺へ移築された東塔や


南北朝期に焼失した西塔の礎石をつぶさに眺めたり、


鎮守社の狛ちゃんと遊んだり、


金堂跡の礎石から往時の大きさを想像したり、


本堂を囲む講堂の礎石とお話しました。


本堂からもれ聞こえてくる読経の朗々たるお声にうっとり。


文珠堂跡の小さな礎石にもごあいさつ。


太子堂では、屋根瓦のくりくり~(*^_^*)に、なんだこれ?と思い。

一旦ここを離れて、吉野川や国栖を探索。


岩神神社等をお詣りして過ごしました。

この間に思ったのは、国の史跡に指定されている世尊寺の維持管理は、いったいどうしているのかな、ということ。

周知の如く、文化財指定を受けると所有者の意向に沿わない管理体制を求められるのが、今の文化財保護法。

やれ耐火建物に入れろだの、触るな出すな見せるな、だの。

西洋のように石造ならまだしも、木造が主流の日本では、燃やさないことが重要なのはわかっておりますが、しかし。

コンクリートに箱詰された仏様に何の意味があるのかな。


そう思いつつ、再び世尊寺へ。


ご本尊阿弥陀如来様の前で、住職さんのお話をゆっくり聞くことができました。

世尊寺の歴史については過去記事で述べましたので割愛しますが、
こちらではかつて檀家がなく、先代が苦労されたとのこと。

日々の暮らしのために今の住職さんは学校の先生を定年まで勤め、文化財指定を受けている制限の中で手探りで維持されています。

京都市内や奈良市内の観光地ならば、拝観料をとることも容易でしょうが、世尊寺では仏像拝観を希望したときだけ。

マンツーマンでお話させて戴いて、申し訳なさに身が縮こまります。


聖徳太子像が年末まで出されているのは、少しでも多くの人にお参りいただきたいからとのこと。

そのお気持ちがとても嬉しいです。


住職さんが修行時代の師から言われた言葉。

「お花の咲くお寺になさい。」

桜、ツツジなどはどこのお寺にもあるから、他にはないお花を咲かせたいといろいろなお花の木を境内に植えておいでです。

一本一本に名前と説明を記した名札が付けられていました。

晩秋の殺風景な時季に訪れてしまったので、次は春に来たいです。


史跡・比曽寺跡は、境内だけでなくその周囲にも及びます。

これは、往時は現在の本堂以北を含む広大な土地に複数の塔頭が並ぶ大伽藍であったため。

今は耕作地となり、お寺から地元の人が借り受けて、耕作。
昔は「年貢」の形でお寺へ納められていました。

ここへきて問題が。

それは、各地に見られる高齢化による耕作人不足。
もう農作が出来ないのでお返しします、との申し出が相次ぐけれど、返されてもお寺でも人手がない。

細々でいいから、使ってくださいな、と言っているそうですが、それがいつまで続くのやら。

また、以前、数日間本堂で展示した後に文化財指定を受けてしまった絵巻は、展示不可となってしまい、住職さんが見せたくても見せられなくなり、何のために持っているのかしらね、と苦笑しながらもとても悲しそうでした。


境内にある遺跡や太子堂等の建物は古くからの寺社建築を学ぶのに貴重なものです。

仏像もまた、奈良時代のものでとても素晴らしいお姿です。


鐘楼が二階建てなのは、遠くまで音色が届くようにするため。

しかし、住職さんのお声はどこまで届いているのでしょう。


巷では、※●◇遺産やら何やら不思議な名前の遺産が増えていますが、観光誘致の為の名称と本当に価値のあるものは違うと思います。

大型バスで乗り付けるだけ、わーっと来てわーっと帰っていくだけ、の観光を重視するようでは、本物の史跡が衰退し、維持管理出来なくなり、荒廃していくのではないでしょうか。

所有者個人や地元の好意だけで出来ることは限られています。

日本の文化、有形であれ無形であれ、遠くない将来に滅びていくものが各地に無数にある現実をもっと知らないといかんなぁと思います。



帰りは日暮れも日暮れ。

途中で真っ暗になってしまいました。えへ。


世尊寺の住職さんとゆっくりお話ができたこと。

今年一番の出会いであり、一番の思い出になりました。


世尊寺シリーズ、おしまい。


世尊寺(史跡・比曽寺跡)
《住所》奈良県吉野郡大淀町比曽762




いつも応援いただきありがとうございます。巨大で立派なお寺よりも、ひっそりとした所の雰囲気が個人的に好きなのもありますが、ここはこれからどうするんだろう?と思う場所もしばしば。世尊寺は静かながら隅々までお手入れが行き届いており、住職さんの日々のご苦労と前向きな姿勢に頭が下がりました。ほんとに、素晴らしいお寺です。お近くにお越しの際はぜひ、お立ち寄りくださいませ。
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ぽちぽちぽっち、ありがとうございます。
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No title

こんばんは。

『大型バスで乗り付けるだけ、わーっと来てわーっと帰っていくだけ、の観光を重視するようでは、本物の史跡が衰退し、維持管理出来なくなり、荒廃していくのではないでしょうか』
激しく同意します。
〇〇遺産だけでなく〇〇ュ〇〇もね。

あれこれ書きたいことはいっぱいあるんだけど、描いては消し書いては消し、結局書く度胸が無いのよね。
人は(日本人は?)格付けにどうしてこうも弱いんだろう?とか。



万見仙千代様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

そうなんですよー。あれこれ書きたいけど、書いては消し書いては消し。
地域の活性化になっている部分を否定はできないし。
迂闊に書いて、傷つけたり不快にさせては本末転倒ですし。

なんと言いますか、史跡や遺跡の権力集中?中央集権?
一部を重視するあまり他のものがおざなりになっている気もします。

今はブログやSNSのおかげで情報を拡散することも、また集めることも容易になりました。

これからもひっそりと佇む史跡や神社仏閣を訪れて、ご紹介出来ればいいなぁと存じます。

息抜きに、狛犬さんを挟みつつ。うふ。

No title

こんばんは~

>岩神神社

すごい磐ですね^^

おされ狛さんのニヒースマイルが(・∀・)イイ!

ちょっと時間押してるので、簡単なコメントでごめんなさいさせて下さい。

ぽちぽちぽちーーー☆

時乃★栞様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

岩神神社、よろしければ記事にしておりますので、国栖の神のお話とお楽しみくださいまし。

まー、びっくりしました。巨大な岩に。

お忙しいでしょうから、読み逃げていただいていいですよ。
年末ですしねー。うん。
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古典芸能の能楽の、謡と仕舞のお稽古ぐだぐだ日記も。

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