清水氏館跡。平維盛子孫と色川郷

太田川を源流に向かって遡り

この辺りでは「小色川」となった川を渡り色川の郷へ。

この辺りは、「口色川」。
色川の源流となるのに入り口を意味する「口」が付くのは、
南西になる那智から見て、近い側なので。(『紀伊續風土記』)

平維盛が隠れ住んだという、色川。

正面にあるのが、清水氏館跡。
『紀伊續風土記』によれば、平維盛の子孫が清水氏だと伝わります。
『紀伊續風土記』
「平族が亡んだ後、三入(三位中将)維盛卿が当郷に来奔した。
この土地の著姓等は密かに迎えた。
維盛は大野村の奥、藤綱の要害に匿われ、その3年後に当村に移り、氏を清水と改め郷士となり村の著姓と婚を通した。
その子孫を色川一族という。
応永年中に書いた色川清水家由緒書に詳しい。」(口語訳)
※応永年間は、1394年から1427年までの期間。
この時代の天皇は後小松天皇、称光天皇。
室町幕府将軍は足利義満、足利義持、足利義量。

都へ残した家族を想い、心ここにあらず、な維盛でしたが。
色川に姿を隠した維盛は、
「清水」と名を換え子供をこさえ。
・・・こら。

「清水氏館跡」(那智勝浦町指定文化財)
この館跡は間口29.1メートル、奥行き21.2メートルあり、三方を石垣で囲まれています。
邸宅は約180平方メートルあり、他に馬屋、土蔵などの建物がありました。
近くには平維盛の子孫と言われている清水家の菩提寺の宝泰寺や墓地跡もあり、地方の豪族にふさわしい館であったことを想わせます。(現地説明板より)

現況、よそ様のお宅の敷地です。
維盛の子とされる「盛広」も清水姓を名乗り、
その一族がしだいに勢力をもち、
土豪として南北朝や戦国時代を通じ「色川一党」として活躍します。

『紀伊續風土記』
「建武の頃。色川左兵衛尉平盛氏という者。
南朝に奉仕して軍功があり、建武3年、法勝寺宮から日高郡岩代荘を賜わり、また、その子盛忠の軍忠を賞し、兵衛大夫に任命される。
延元年中の盛氏の注進状に、浜ノ宮村・佐野荘・新宮などで尊氏の一族と戦って忠を尽くし、山城国山崎の向明神の林などで合戦があったことを書いてある。」
色川氏が台頭したのは、南北朝時。
南朝に尽くしていることが記されています。
また、色川氏は戦国時代には、紀伊国人衆として名を連ね、
熊野の統一を目指す堀内氏と、戦いを繰り返します。
秀吉の紀州攻めの際には、堀内氏と共に秀吉に従い、所領安堵。
江戸時代は、紀州藩新宮城主の水野家に仕えます。

『大日本史』を編纂した徳川光圀。
紀州を調べるにあたり、家臣佐々宗淳(助さん♪)を紀州へ派遣。
この時に調べたものが、庄屋の清水家に伝わる「色川文書」。
新宮城主の家来が色川に行き、
清水家第19代盛成(覚太夫)と共に佐々宗淳の元へ「色川文書」を届けています。

清水氏館跡背後の山から茶畑を見つめていたら。
古い古い形の墓所がありました。

誰のものかはわかりません。
実は清水氏館跡を探してうろうろしまして。

棚田でした。

棚田でした。

ほんとに見事な石積の棚田なのでした。

地図と全然違うのに、ここだー!っと思い込んだ、よそ様のお宅。
こ、これは、間違えてもいいですよね・・・?
と、こんな急傾斜地の棚田が美しい

維盛の子孫が住んだという伝承の残る口色川なのでした。
参考文献
『紀伊續風土記』
http://www.keyspot.info/fudoki/irogawago.html
「色川氏」について
武家家伝・色川氏
http://www2.harimaya.com/sengoku/html/irokawa.html
wikipedia色川氏
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/色川氏
いつも応援いただきありがとうございます。維盛が隠れたという色川郷には、平家の紋である揚羽蝶のついた旗が、古式の面と共に伝わるとか。室町時代には熊野三山詣の人々へ色川のお茶を供していた地域。色川清水家由緒書の編纂はその頃ですね。維盛の時代より数百年後です。ぽわーっと、そうなのかぁー、っと思っておくのがよろしいかと。



ぽちぽちぽち、ありがとうございます。
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