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稲田家家臣達を襲う二つの悲劇

こんにちは。

いよいよ北海道へと向かった稲田家家臣達。


(せめて画像は明るく・・・)

明治4年(1871年)2月。

先発隊47人(30人とも)が出発。


明治4年4月。

移住者本隊第一陣。137戸546人。

メンバーは稲田家家臣団の武士階級、半士半農の人々。

3隻の汽船に米・麦・農具・家具などを満載して洲本を出航。

明治4年5月、静内へ上陸。



5月の淡路島は初夏の日差しが降り注ぎますが、
北海道ではまだ、山には雪。うっすら、じゃなくて、真っ白。

静内へ海から入るときに日高山脈を見た移住者は、この雪を

「山に白い雲がかかったように見える」(『北海道移住回顧録』)

と記しています。

淡路島でも雪は降ります。
でも、山に雪が白く積もった景色は、そうそう見られるものではなくて。

実際、GWの北海道旅行は、レンタカーのタイヤはまだ、スタッドレス。
ふきのとうが顔を出して「こんにちは~」する気候。

静内上陸前に、「きゃー。綿入れ着なくちゃー」っと騒いだ人々の気持ち、わかるわかる、です。

フェリーから苫小牧港へ降りた瞬間、「さっぶ!」「うぅわ、さっぶ!」を連呼した関西からの乗客が多々。


(静内の南、三石の海岸。せめて画像は明るく・・・)

持参した家財道具等は、漁場の網を入れる倉庫などへ納めて、
とにかく開墾。

第一陣には農業の専門家も同行しましたが、先祖代々の田畑を耕すのとは訳が違います。


人力だけで、鬱蒼と生えた木々を倒し、根っこを掘り起こして除いてー。

っと、そこへ。

明治4年7月。

家財道具一式を入れていた倉庫が、全焼。



北海道は、淡路島と全く違う極寒の地、とは知っていたので、
綿入れの上着や着物、布団はしっかりとたくさん持参。

それが、全焼。

「折から西風激しく延々天を焦がし、
さしもに大なる倉庫もわずか数時間以内に灰燼に帰せり。
多数の移住民は追々寒天に向かい、
衣なく夜具なく、その惨状実に名伏すべからず。
その損害も莫大ならん」(『移住顛末』稲田邦衛)


ぼーぜん。

冬に備え、移住者達は開拓使からお金を借りて夜具などを補填しましたが、さぞかしショックだったことでしょう。


(せめて画像は明る・・・もぅ、ええ)

明治4年8月。

第二陣、出航。

船は「平運丸」。215人の移住者が乗船。

長さ90m、幅14m、2本の煙突に3本のマストの鉄船。
元は薩摩藩の軍艦という、立派なお船でした。


船は淡路島から紀州沖へ。



8月といえば、奥さん。


台風の季節ですな。(昨年の10月連休は台風到来)

紀州沖で暴風雨に遭った平運丸は、周参見(すさみ)の港へ向かいます。


周参見といえば、イノブーたん。

イノシシ+ぶた=イノブー。


植物園の温室でしか見たことなかった、ブーゲンビリアが咲く温暖な地。

紀伊半島、南紀白浜と最南端の潮岬の間。


お天気がよければ、こんなにのーんびり。

ひとたび暴風となると


こうなる。

海岸線には岩礁が連なる周参見ですから・・・

平運丸、「亀岩」という名の暗礁に、座礁。



乗船者215名のうち、87名が溺死。

この平運丸は、先発隊の移住者達へ届ける食料の他に、
稲田家伝来の大切な家宝ともいえる品々、を満載。

それを全て失ってしまったのです。

悲劇は移住者達だけではなく。

平運丸の船長は、周参見のお寺で割腹自殺。



稲田家主従の苦心惨憺の日々は、
やがて開拓の先駆者、そして成功例へと実を結びます。


・・・?


おんまさんがなにか?


つづく。


参考文献

徳島県立文書館
http://www.archiv.tokushima-ec.ed.jp/exhibition/k_020/04.htm

『北海道開拓と徳島の人びと』(徳島県立文書館/文書館開館十周年記念特別展)

『移住顛末』(稲田邦衛)
『北海道移住回顧録』(静内郷土史研究会・編)

洲本市郷土史料館、館内配布資料「庚午事変」


いつも応援いただきありがとうございます。開拓にあたった人々の筆舌に尽くしがたい苦労は、静内へ入植した稲田家家臣達だけではありません。しかし、彼等の主である稲田家の家宝の数々が海の底に沈んだことはひとつの時代が終わってしまったような感覚ではなかったかと思います。船長の割腹自殺は、名称こそ明治になれど、心はまだ切り替わらない切ない時代だったのだなぁと、悲しくなります。
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No title

こんにちは。お邪魔します。
初期に開拓移住で入られた方々のご苦労 本当に並大抵ではなかったことと思います。。 寒さも想像以上だったかと思います中、火事で色々失ってしまうとは。。 きっと平運丸の到着を希望の灯みたいに皆様待ちわびていたのではないかと思うと、その後のお話も本当に切ないです。これらを経て静内の地で実を結んで行かれるんですね。

No title

こんばんは。

蜂須賀家と稲田家
どちらが懲らしめだったやら。
武士って、実より名をとるのねぇ。
踏んだり蹴ったりの稲田家、本当に気の毒に。
だけどそういう人たちの努力の下に、今の北海道はあるのよね。

家宝も沈んでしまい、船長さんは割腹自殺ですか。
それしか責任がとれないと思ったんでしょうね。

北の大地とか言われて、今や観光地として1番の人気。
何度も書くけど、もっと子供たちに地元の北海道の歴史を教えるべきだと思うの。

おきまちあき様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

本当に、原野を拓くってのは、大変なことでしょうね。

のほほんっと穏やかな淡路島から、北海道ですもの。
そりゃもう、想像を遥かに越えた寒さだと思います。

火事は、全てを焼き尽くす程の大きさだったそうなので、
炎を見つめるしかない人々は、絶望したことでしょう。

おっしゃる通り、淡路島から荷物が届くことを待ちわびていた中での、
海難事故。

お気の毒という言葉では失礼な程の衝撃だったと思います。

それでももはや淡路島にも帰ることは出来ない状態なので、
現地で頑張るしかなく。

何を支えに頑張ったのか、あれこれ考えてしまいますね。

万見仙千代様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

蜂須賀家と稲田家。
まったく、踏んだり蹴ったりの稲田家主従の皆様にはお気の毒としか言いようがありませんね。

船を雇って移住団を送ったとあるので、船長は少なくとも淡路島の稲田家関係者ではないですが、船を沈めてしまった事は、船長の責任だと思い、割腹自殺されたのでしょうね。

薩摩藩の軍船だったので、士族なのかそれに近いのかなぁ。
責任の取り方が、痛々しくてなりません。

ロシアの南下に対する防衛として、とにかく北海道を拓かなくてはならない事態が切迫したのが、この頃で。

明治新政府の危機感に対して、実感がない既存の藩は動きません。

結果的に稲田家主従の開拓は、政府の意向に添った上に、少なからず成果を上げていくので、「悲惨な物語がありました」という昔話で終わらない点が数々の開拓史の中で突出した例としてあげられているのだと思います。

現地での教育がどこまでされているのか存じませんが、
北海道も本州と同じように古代、中世があって、現代があるのだと習っているといいなぁと思います。

受験勉強が中心になると、とかく地方史はおざなりに。

これは全国的に仕方ないことかもしれませんが、
受験のない小中高一貫の学校等では、他ではしない勉強も行うことが出来るのに、惜しい事です。

まーっすぐな道や広大な景色は、正直言って数日で飽きます。
でも、歴史を知ってからあちこち巡ると、何を見ても楽しくなります。

もーすこし、北海道の観光担当者達も、よーくよーく考えて、方針転換する方が、観光地が長持ちするかもしれませんね。

奈良の郊外に石っころを見に行くのも、北海道の雄大な風景の中にある大規模な遺跡群を見に行くのも、どちらもいいなぁと思うんですが。

まぁ、北海道へ旅行する目的はグルメと景色ですから、
なかなか難しいですね。

No title

ドラマより過酷な現実・・・・゜・(つД`q。)・゜・

泣かない狛ちゃ・・・
泣くときは財布を落とした時と・・・が死んだ時だもんね・・・(´;ω;`)ウッ

なんか色々胸に迫ってコメントができない・・・
すぐ感情移入しちゃうオバカさんです

ぽちぽちぽちーーー☆

時乃★栞様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

火事と海難事故は、トドメだったでしょうね。
気温の差は暮らし始めれば如実にわかりますし。

そうなの。泣くときは、財布を落とした時と・・・だよぉ。

淡路島の洲本の郷土史料館でこの稲田家主従の開拓について知ったとき、
えー、ここから北海道?そりゃ大変だよーって思って。

数年間あたためてた静内へ行きたい病、ようやく完治へ。

一緒にめそめそしてくれてありがとうございました。
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つねまる

Author:つねまる
史跡をちょろ見しながら、景色を楽しむゆっくり旅。地味。

古典芸能の能楽の、謡と仕舞のお稽古ぐだぐだ日記も。

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