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平家物語「実盛最期」。老体に鞭打ち、一騎残る

こんにちは。



倶利伽羅峠で木曽義仲に敗退した平家軍。

加賀国篠原に退却して兵馬を休めていたところへ、 木曽義仲の軍勢一万余騎が篠原に押しよせ、再び敗退。(篠原合戦)

散り散りになって敗走する平家軍の殿(しんがり)を自らつとめたのが、齋藤別当実盛。


富士川の戦い前に、維盛達へ坂東武者の強さを語って聞かせた人物。


「赤地の錦の直垂に、萌黄威の鎧着て、鍬形打つたる甲の緒を締め、金作りの太刀を帯き、二十四差いたる切斑の矢負ひ、滋籐の弓持つて、連銭葦毛なる馬に金覆輪の鞍を置いて乗つたりけるが、御方の勢は落ち行けどもただ一騎返し合はせ返し合はせ防ぎ戦ふ」

総大将の如ききらびやかな姿の実盛は、たった一騎で奮戦。



実盛の前へ、木曽義仲軍から手塚太郎光盛が進み出て、たった一騎で残った実盛に、見上げた者だ、「名乗らせ給へ名乗らせ給へ」と声をかけます。



実盛が逆に『かう言ふ和殿は誰ぞ。』と尋ね、光盛が『信濃国の住人手塚太郎金刺光盛』と名乗ります。しかし実盛は


「さては汝が為によい敵ぞ。但し和殿下ぐるにはあらず。
存ずる旨があれば名乗る事はあるまじいぞ。寄れ組まう手塚。」


「では私は貴殿にとって都合のいい敵だ。貴殿を侮るわけではないが、思うところがあって名乗りはしない。来い、組もう、手塚」

と、敢えて名乗らず。



「あつぱれ己は日本一の剛の者に組んでうずなうれ」

「おお、貴様は何と、日本一の剛の者にかかってくるのか。上等だー!」と、主を守るために間に入った光盛の郎等を自分の乗った鞍の前輪に押さえつけ、頭を掻き切って捨てました。


「手塚太郎 郎等が討たるるを見て、弓手に廻り合ひ、鎧の草摺引き上げて二刀刺し弱る処に組んで落す。

斎藤別当 心は猛う進めども、軍にはし疲れぬ手は負うつ、その上老武者ではあり手塚が下にぞなりにける。」


光盛は、郎等が討たれるのを見て、実盛の左手に回り込み、鎧の草摺を引き上げ、刀で二太刀刺し、弱ったところを組んで落とし。

実盛は闘志をむき出しにして突っ込んだものの、既に戦いに疲れ、痛手も負い、老武者でもあるので、手塚に押さえつけられてしまいました。


「手塚太郎、馳せ来たる郎等に首取らせ、木曾殿の御前に参つて

『光盛こそ奇異の曲者組んで討つて参つて候へ。
大将かと見候へば、続く勢も候はず。
侍かと見候へば、錦の直垂を着て候ひつるが『名乗れ名乗れ』と責め候ひつれども、つひに名乗り候はず。声は坂東声にて候ひつる。』

と申しければ」


手塚光盛は、実盛の首を郎等に落とさせ、義仲の前へ持参します。

実盛の装束を見れば、大将かと思ったが軍勢がいない。
侍かと思えば、大将の証である錦の直垂を着ている。
名乗れと何度も言ったのに、ついに名乗らず。
言葉は関東訛りであった、と報告。


「木曾殿『あつぱれこれは斎藤別当にてあるごさんなれ。
それならば義仲が上野へ越えたりし時、幼目に見しかば、白髪の霞苧なつしぞ。
今は定めて白髪にこそなりぬらんに、鬢鬚の黒いこそ怪しけれ。
樋口次郎年比馴れ遊んで見知りたるらんぞ。樋口呼べ 』とて召されけり。

樋口次郎ただ一目見て『あな無慙長井斎藤別当にて候ひけり』とて涙をはらはらと流す。


手塚光盛にはわからなくとも、義仲には、わかりました。

この首は、斎藤別当実盛のものであると。



義仲の父・義賢は兄の義朝と対立し、大蔵合戦で義朝の長男・義平に討たれました。
当時2歳の義仲(駒王丸)は義平によって殺害の命が出されましたが、斎藤実盛達が信濃国へ逃したため、今も命があるのです。

「その頃既に白髪混じりだったなら今は真っ白になっているはず。
鬢や鬚が黒いのが腑に落ちない。」

長年懇意にしていた樋口次郎兼光に確認させようと呼んだところ。

兼光は一目見て

「なんと無残な。痛わしい。斎藤別当実盛でございます。」

と言って、涙をほろほろと流しました。


・・・なぜ泣く、兼光。

つづく。



参考文献
新日本古典文学大系『平家物語 』(梶原正昭・山下宏明 校注 岩波書店)


いつも応援いただきありがとうございます。今日は文字ばっかりになってしまいました。実盛最期の物語の真骨頂は次回。義仲の乳兄弟の樋口次郎兼光の涙の理由は如何に。そして一方、実盛の無骨な生き方を描くこともまた、『平家物語』の面白いところ。
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No title

つねまるさん、こんばんわ~♪

光盛くん大活躍ですね!
確か、信濃出身で源義仲が挙兵すると義勇軍みたいな形で参陣したような記憶になっています。
もちろん、木曽義仲さんがいたからなのでしょうけど。

そういえば、五平餅食べたことないです( ͒˃⌂˂ ͒)

piglet01様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

手塚太郎光盛は唄う

「よぉしなかさん、よっしなかさん♪お腰につけた~五平餅ぃ♪」

そうですそうです、義勇軍。そんな感じ。
地元からいきなり英雄が湧いて出たので、おっしゃー!俺もー!なのかしら。

おや。

なんですとー!?五平餅を食べた、ことが、ないぃぃーー!?

・・・(*ToT)(/ー ̄;)(/_;)(T_T)ウソン

愛知県東部等ではわらじ形に赤味噌の田楽味噌でぇ。
中津川へ行くと、団子形にくるみ味噌でぇ。

大阪へ来るまではチキンラーメンの如く全国区だと、メジャーだと思っていた、あの五平餅をー!

うううう。

どうしても食べたくなったら、おにぎりをぎゅうぎゅうつぶして、オーブンで焼いて、献立いろいろ味噌を塗って代用品にする、あの、ごへいも(もうええ)。

No title

こんばんは。

あーあ、ちょっと留守した間に、こんなにお話が進んじゃって。
倶利伽羅峠の牛さんに松明の計、違うの??
そうだと思ってたのに。
どちらにしても、あの峠に大勢の人が落ちて行ったのは本当なんでしょうか。
哀れなことです。

万見仙千代様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

おかえりなさーい\(^o^)/

お留守の間にせっせと書きためておきましたー。えへへ。
ここ数日は、実盛じいさまのお話が続いておりますが。おほほ。

倶利伽羅峠の火牛の計のお話は、そぉーっとしておきましょ。
現地では、焔をくっつけられたもーもーさんの像がいたり、ゆるキャラになっていたりしてますし。

史実は、まぁ、義仲くんが軍事の天才であったと。

戦い終えて都へ戻った平家軍が五分の一にまで減っていたというのですから、谷へ落ちたり、途中で逃亡したり、討死したりしたことでしょうね。

文字にしてしまうと呆気ないものです。

No title

リトル義仲を背負う実盛のイラストが好きです
(゜-Å) ホロリ・・ってなるの。

>思うところがあって名乗りはしない。

某ブログのスレ住人風に言うと「平氏もメンドクサイ」

ここだけしか読んでないので、間違ってるかもだけど、
敢て名乗らなかったのは、首実検で確実に義仲の御前に出るためなのかなぁと。

身元不明なら論功に困るから評議されるので。
その時に「自分という人間」を「義仲自身に語って欲しかった」のかと。

ぽちぽちぽちーーー☆

時乃★栞様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

リトル義仲2歳。実盛じいさまとの旅路の記憶は薄いでしょうけど、白髪混じりだったことは覚えていたようで。

なので、おんぶ。させてみました。ふふ。

うんうん。『平家物語』の実盛は、義理堅く不器用な感じの印象ですね。

平家に勝ち目はないことを承知していながら、坂東武者同士の会話の中で、元々の主である源氏側へ戻る気はないと断言しています。

義仲のことはあまり眼中にない様子ながら、おもわせぶりなのが『平家物語』の実盛。ツンデレが過ぎる。時乃★栞様、するどーい。

これに対し、義仲をはっきりと意識しているのが、能「実盛」の実盛。

実盛実盛と連呼してますが、ほんと、このじいさまのお話はいろいろと考えることがあって面白いですね。

首実験で義仲の前に出る予想はしていても、よもやザブザブと洗われ、白髪を晒されるとは、くつじょくっ!かも。
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つねまる

Author:つねまる
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古典芸能の能楽の、謡と仕舞のお稽古ぐだぐだ日記も。

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