真田丸。家康の出世と扇の変遷。小道具さんは能好きか?
大河ドラマ「真田丸」、小道具さんに能好きがいるのではないかとわくわくして1年楽しみました。
きっかけは、

第4話「挑戦」

扇の特徴から、能の観世流の仕舞扇と気付いた時から。
仕舞と謡の時に使用する扇を、仕舞扇、正確には「鎮扇(しずめおうぎ)」と称します。
観世流の仕舞扇の特徴として、

要がまぁるい。

親骨に三つ彫り(3ヶ所、細長く穴が開いてる)。

三段の水巻の文様、いわゆる「観世水」が描かれています。
これは、お稽古や素謡(詞章だけうにゃうにゃと謡う)の時に用いる普段使いの扇で、観世・宝生・金春・金剛・喜多の各流派によって、扇の仕様が異なります。
はじめの頃の家康は、この扇をご愛用。

第5話「窮地」。ばりっばりの紺地観世水の仕舞扇。

ところが、家臣の本多忠勝はお日様きらきらの軍扇。
見えますかしら。
扇を閉じたら、通常は家康の持つ扇のように骨から紙がはみ出ますが、軍扇は骨で紙が隠れています。
また、地紙の金地は邪気を避けるもの。
一般的な軍扇の表はお日様(昼)、裏は三日月(夜)。
「昼間は、太陽側を表とする。骨を六つ開き、残り六つは畳んで使う。
夜間は、三日月側を表にし六つ開いて六つ閉じる。
合戦勝利後は、全部開く。」と作法が決められており、
「悪日に合戦する時、昼間は三日月側を表として使い、夜間は太陽側を表にして使う」(昼夜を扇で逆転させることにより、悪日を吉日とする)(『中原高忠軍陣聞書』主旨)そうです。

「昼間は、太陽側を表とする。骨を六つ開き、残り六つは畳んで使う」
忠勝、お行儀がよろしい。
このあとは伊賀越え。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる家康です。

さて、この違いをどうとるか?
無論ここは、普段から軍扇を構える忠勝と、よきにはからえばよい家康の立場の違い等を思うわけですが。
お金の話。

金の砂地(金の小粒が散りばめられた地)に観世水なら、1万円ほど。
家康が持っている扇に金砂地が見えないので、白地ならその半額以下。
質素です、家康。
忠勝の軍扇は、金地に日輪程度なら1万5千円前後。

・・・家康ぅ~(T▽T)
能(謡&仕舞)のお稽古を初めてすぐに購入する一番お手頃価格の白地に紺の観世水の扇から、話が進むにつれ、家康の扇は次第にグレードアップしていきます。

第28話「受難」。家康 Jr. 秀忠と正信 Jr. 正純の初対面。

扇の骨の色にご注目。

木肌のままから、黒骨に変化。
観世流の謡や仕舞ではほぼ用いませんので、価額不明。
ちょいと扇が出世したと表しているのかなー。
次記事にしますが、特殊な絵柄(修羅扇)では常に黒骨。
たまーに他のほののんっとした絵柄なのに黒骨だと、「いきってんなー」と思ったり。ごほん。

第37話「信之」。関ヶ原後、信繁親子とご対面。

九度山で死ね死ねと悪魔の家康です。
ここまで黒骨の扇でしたが、

第41話「入城」。扇が、金地に紺の線になりました。
金ですよ、金。
家康、いぶし銀ではなく、いぶし金に変身。
家康は秀吉が贔屓にした金春流ではなく、主に観世流(観世大夫)を重用します。これを踏まえての観世流仕舞扇の使用なら、すごいことです。

第44話「築城」。じーさま、昔とった杵柄。

戦の現場ですから、Jr.秀忠の扇は軍扇。

まぁた真田くんにいぢめられるんかっと怒る家康も、軍扇。
軍扇となるともはや、能の管轄外。
ですが、能や日舞の扇に特化した店等では、趣味の扇として手作り。
価額は、大御所様の格式から骨に彫刻などの細工があるとして、2万円弱。

最終回。伊賀越えの頃は自力で全力疾走してた家康、運ばれる。

潮目が変わった途端、えいえいおー with 軍扇。

信繁(幸村)とのご対面となり、西部劇の開幕。
最終回、ついでに。

べそべそ泣きながらも、狛犬さんのぷりっけつは気になりまして。

自分は動けないから、佐助にSOSな狛犬。
きっとね、このあとね、信繁(幸村)と佐助は、狛犬さんの背中に乗って、どこかへブーンっと駆け落ちしたのよ。
いつも応援いただきありがとうございます。一番はじめに使っていた白地のお稽古扇から、黒骨、金地へと変化していく家康の扇。家康の出世と共にグレードアップしていくのがとても面白かったです。他の面々は地図を指すときに軍扇を用いる程度で、家康の扇の使用頻度は傑出していました。小道具さんってすごいなー、細かいなー、マニアックだなーっと、1年間とても楽しかったです。



お手数をおかけ致します。ありがとうございます。
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