金屋子神社(4)金屋子神の好き嫌い。死はタブーにあらず

金屋子神社。
安政5年(1858)に火災で焼失、元治元年(1864)再建。
再建時がたたら製鉄バブルのため、総けやき造で彫刻が素敵な社殿です。

龍虎の仲良しコンビ。

なかなかシュールなお顔です。

はめ込まれていたお目目が取れちゃったのかな。

相変わらず、撮影がへたぴーですみません。

多分、狛犬だと思います。根拠?前足があるからっ。
へへへへ。
【金屋子神の特異性】
たたら製鉄操業の現場にお祀りされる金屋子神。
金屋子神の実態については、八幡神、天日槍、卓素、須佐之男命、金山彦命など諸説あり。
いずれにしても、たたら製鉄や鍛冶に携わる人々が信仰していた神様は「金屋子神」。これは事実。
彼らが製鉄技術と共に金屋子信仰を各地に広め、金屋子神社の宮司・安部氏がそれを形式化したものと推定されます。
さて。

金屋子神(画像/岡山県新見市の中世たたら製鉄再現現場)
好き嫌いの激しい神様で、禁忌がいくつかあります。
その禁忌がたたら製鉄操業の現場においてのルールとなっています。
《嫌いなもの!犬と蔦、麻》
金屋子神は、犬に吠えられ蔦を伝って逃げた。
しかし、蔦が切れたので犬に噛まれて亡くなった。(鳥取県日野郡)
蔦でなく、麻苧(あさお)に絡まって亡くなった。(島根県飯石郡)
島根県仁多郡では蔦は切れたものの藤に掴まって助かる。藤は好き。
⇒たたらの現場では
犬を入れない、たたらの道具は麻苧を用いない。

狛犬はいいんだよ。たぶん。
《嫌いなもの!!おんな!》
金屋子神は♂か♀か。
「金屋子神は通常女神とされるが、それはこれを祀るのが女(ヲナリ)であったからで、もとは若々しい男神であった」(安部正哉/金屋子神社宮司)
だそうですが、

金屋子神はたたらの現場では、女の神と伝えています。
あまり見目麗しくはなく、とにかく焼きもちやきで気難しく、他の女性が仕事場へ入ってくる事を極端に嫌います。
⇒たたら製鉄の現場では
村下(むらげ/たたら製鉄の総技術監督)さんは、妻が月のものや出産前後にはたたらを休み、休めない時は家へ帰らず。
村下さんは、お風呂は女性の後に入らず。
たたら炉で鉄を吹いている間は、村下さんの妻は化粧もせずに地味な姿で神様の機嫌を損ねないよう過ごした。

違う違う。狛ちゃん、そうじゃない。
もっとも、実際には炭等を運ぶなどの作業で女性も手伝っていたそうです。(菅谷高殿現地での説明による)
《死を忌むことなく、むしろ屍体が好き》
・・・。
金屋子神の死後、途方に暮れた門弟達への神託 from 金屋子神。
鉄がどうしても涌かないときは四柱に死体を立て掛けよ(仁多郡)
村下の骨を四柱に括り付けよ(吉田村)

他の神様が死を忌むのに比べ、なんとまぁシュールです。
⇒たたら製鉄の現場では
たたら場での死のケガレは無く。
人が死ぬとたたらの中で棺桶を作った(安芸・山形郡)
葬式が出ると、棺桶を担いでたたらの回りを歩いて回った(備後双三郡)

(画像/菅谷高殿)
とても不思議でシュールな金屋子神様なのでした。
参考文献
鉄の道文化圏推進協議会編『金屋子神信仰の基礎的研究』/「ヒストリア」
『金屋子縁起と炎の伝承:玉鋼の杜』 金屋子神社/安部正哉著/1985
日立金属HP『たたらの歴史・金屋子神』
http://www.hitachi-metals.co.jp
いつも応援いただきありがとうございます。
たたら製鉄操業の現場には必ず祀られている金屋子神。姿を描いた絵であったり、お札であったり、勧請して祠を建てたり。たたらに関わる人々から現在も変わることなく厚い崇敬を受けています。その姿を見ていると、これほど真剣に、あちこちで信仰されている神様も少ないのではないかと思いました。



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