生野銀山(6)大阪の陣と生野銀山技術者軍団

こんにちは。

関ヶ原後、豊臣直轄の生野銀山は家康の手中に。

家康の命によりまず赴任したのは、服部権太夫(『銀山旧記』)。

慶長5年(1600)徳川家康、「但馬金銀山奉行」を配置。

初代奉行は、間宮新左衛門直元


ですな。


間宮氏は宇多源氏佐々木氏(佐々木神社神主家)といい、近江から伊豆(伊豆国田方郡間宮村)、相模・武蔵へ移り、北条氏に仕え。

秀吉の小田原城攻めの際に討死した間宮康俊に娘(おひさ)あり。

おひさは家康の側室となり、その縁か、康俊の孫の直元・高則らは徳川旗本、康俊の弟綱信の子正重・重信らも徳川家臣に。

間宮一族の後裔には、樺太探検で有名な間宮林蔵、『解体新書』の杉田玄白(杉田間宮氏)等がいます。(『武家家伝/間宮氏』より)


そんな間宮さんちの、新左衛門直元。

慶長5年(1600)から慶長19年(1615)まで初代・但馬金銀山奉行。



この時期、生野銀山は特に繁栄。

鉱山が数十ヶ所に及び、人が集まり、白口に並ぶ人家は2階3階建に見え、絹布、唐織など無いものは無く、奥銀谷・新町の新しい町並は全て瓦葺(『銀山旧記』)。


ですが。

この間宮新左衛門直元、慶長19年(1614)。


大阪城に出没します。

そう、大阪冬の陣です。

大坂冬の陣で徳川軍は佐渡・石見・但馬・甲斐・伊豆から金堀職人を集めて天王寺口の三ヶ所から掘って城に入ろうとした。しかし土が悪くてうまくいかなかった。(『難波戦記』要旨)


トンネルは失敗だったようですが。


間宮は、大阪城を攻めるのに「外堀の水抜き」を提案。



生野銀山より町役人・下財(坑夫)100人余を引連れ大坂冬の陣に参加。


生野銀山では、手作りポンプで排水。


鉱山において水抜き、排水処理は大切なお仕事ですから、得意分野。

生野銀山に加え多田銀山や近くの鉱山から集めた坑夫達によって
大阪城の堀の水を抜き、川を堰き止め、塹壕を堀り、


冬の陣後の例の「外堀埋めちゃえ作戦」に貢献。


んまっ。よく聞きなさいっ。


石見銀山からは、竹村丹後守(竹村九郎右衛門嘉理(嘉政)/石見銀山の奉行)が堀子達3百人を連れて出陣し、外堀の水抜き作戦の功で感状を与えられています。(『島根県歴史人物事典』)


生野銀山では?


そう、かぶをもらいま

・・・「加奉」です。


生野の坑夫の親方(地親)達(特に奥地域)は馬に乗り、奉行に従い、時には奉行の代わりに指揮をとりました。

大阪城の外堀の水抜き工事は、落城に大きく貢献。

地親は元々、奉行の下で町方支配や銀掘りの指図をしていましたが、

この大阪城での功により彼等を「奉行に加わる」を意味する「加奉行(かぶぎょう)」と呼ぶようにと沙汰が下ります。

ご本人達は、加奉行とは畏れ多いと謙遜し、「加奉」と唱えるように。(『銀山旧記』)


※間宮は生野だけでなく統治範囲の他の但馬の鉱山からも集めており、地親から「加奉」となった記録は中瀬(養父市関宮町)、明延(養父市大屋町)にもあります。




また、翌年5月の大阪城落城後。

生野の「加奉」達は戦場での働きを賞され、次の事を許されます。(『難波戦記』『藤垣家文書』)

①孫の代まで名字帯刀

②各自・先祖の名を町名として付ける事



特に、大坂城の外堀の「西横堀」「道頓堀」「長堀」の三か所の町名に水抜き御用に手柄のあった奥地区代表の名前を付けることを許されます。

大坂の町名に残った奥地区代表の名

小 野  藤右衛門、平右衛門、権右衛門、助右衛門
新 町  次(治)郎兵衛、九郎右衛門、久左衛門、茂左衛門
奥銀屋  吉左衛門、七郎右衛門、宗右衛門
相 沢  孫左衛門


(「生野史談会・一里塚12号『大阪のど真中に町名を残した銀山の加奉たち』」/ 佐藤文夫著/平成19年)


「長堀次郎兵衛町」「長堀平右衛門町」は長堀川界隈に明治5年まで存在。
「助右衛門」は西横堀川にかつて助右衛門橋が架かっていた。
「宗右衛門町」「久左衛門町」「吉左衛門町」「久郎右衛門町」は道頓堀に。

宗右衛門町なんかは、そえもんちょーとして、今もにぎやか。


知らなかったねぇ。


初代奉行・間宮新左衛門直元は、何をもらったのかな?

慶長19年(1614)12月15日。

間宮新左衛門直元、大阪冬の陣で、没。享年39。


なんてこった。

間宮の推挙で家老の山川庄兵衛が二代奉行に就任。

生野銀山は、佐渡金山・石見銀山と並び天領として徳川幕府の財政を支えるも、産出量が減少。

享保元年(1716)、「但馬金銀山奉行」は「生野代官」へ。


当時の代官所イメージ。

代官所が置かれるようになってからも、生野銀山での地役人は独自の役職名として庄屋・名主ではなく、年寄、加奉、年行事等と称し、殆どが世襲。

これは明治維新まで継続します。


※間宮は慶長18年より翌年の死亡まで知行1千石で佐渡奉行(『越佐人物誌』牧田利平編/昭和47年等)、『銀山旧記』では間宮を奉行と記しています。
慶長18年4月に前任者の佐渡奉行・大久保石見守長安が病死しており、家臣の田辺十郎左衛門宗政が同年6月より奉行。間宮と重複。

※※宗右衛門町の由来は17世紀中頃に「町年寄」を務めた“山ノ口屋宗右衛門”の名に因んだものとの説もあるなど諸説あります。


いつも応援いただきありがとうございます。
初代奉行の間宮さんを調べていたら面白いお話に出会ったので、ご紹介しました。技術者集団がやることは地味に強烈なパンチになるものですねー。いつの時代も技術があるってのは強いですな。ぽわーんっとした文系あたまなので、とても羨ましいです。

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お手数をおかけ致します。ありがとうございます。
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非公開コメント

こんにちは

今回の間宮さんまで出てきて、楽しく拝見と同時に、
学生のころこう言うブログのような話が聞かれたら、
実際に見て勉強できたのに・・・と。

何時もながら、資料の綿密さも素晴らしく、
コメントの面白さにも、感心しています。

m(__)m

\(^o^)/ 今晩は。

さすがお師匠さん。資料も豊富、知らないことばかりで、一つひとつ勉強になります。

φ(゚0゚*)ホォホォφ(。_。*)メモメモφ(゚o゚*)フムフムφ(。_。*)カキカキ

大河ドラマに使えそうなネタでもありますね。

No title

こんばんは。

そうなんですか。
大阪冬の陣に、生野から技術者集団が行ったんですか。
水を抜かれたら、お堀の意味がありませんものね。
≪①孫の代まで名字帯刀≫
どうせだったら、ずっと許してくれたら良かったのに。
そうそう、宗右衛門町
歌で有名よね。
そんな歴史があったとは。
とってもお勉強になりました。

one0522様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

あたたかいお言葉、ありがとうございます。
とても励みになります。おかげさまで今日も元気に更新中です。

受験のための歴史の授業では、丸暗記するばかりで面白くなかったです。
せめて今は好きなものや面白い事に楽しく突進したいです。

大阪の陣に、実際に生野銀山の人達が参加していたことは初めて知りました。
加奉の役職名、地名に名前が残ること、等から確かな事なのだなーっと、びっくりしました。

極力、妄想にならないように気を付けておりますが、時々暴走するかもしれません。えへへ。

minekazeya様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

なぜか生野銀山で張り切っております。
ブラタモリで佐渡金山を見たからかもしれませんが、鉱山の歴史もとても興味深いです。

大阪城外堀つぶせ作戦、映画程度にはなるかしら。
技術者集団が苦心惨憺して何かを起こすお話、面白いですね。

大阪のあの辺りの地名に、なんで人名が多いのか不思議だったので、夢中になってしまいました。うふふ。

万見仙千代様

こんにちは。いつもご多忙の中のご訪問とコメントありがとうございます。

そうなんですよー。

外堀を埋めた埋めたとは聞くものの、水抜き、は、忘れてました。

大阪城外堀界隈での発掘調査でいろんなものが出ているので、もっと涼しくなったら大阪市内へ行こうと思います。暑い間はむりぃー。

孫の代まで、が、末代までを意味することはないと思うのですが、これ、びみょーですよね。どうせなら、っと私も思いました。

宗右衛門町ブルースですね。
そうえもんではなく、ぜひ、そえもんちょー、とお呼びください。

松屋町筋は、まっちゃまちすじ、と読むように、ちょびっと略すのがネイティブのようです。
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