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養父神社(6)八鹿町宿南の狼伝説『掃部狼婦物語』

こんにちは。


養父神社境内社の山野口神社。別名・狼の宮。


養父神社周辺の狼伝説について、ちょろちょろと。

第1回。


【『掃部狼婦物語』(養父市八鹿町宿南の伝承)】

養父市八鹿町(やぶし/ようかちょう)に宿南(しゅくなん)という地区があります。

ここに狼の伝承が残ります。

その名は『掃部狼婦物語』(かもんろうふものがたり)。

宿南村に伝えられた物語を集め、文化・文政期(1804‐1830)に編まれ、内容は


ざっくり言うと、狼の恩返し。


《宿南ってどんなとこー?》


宿南氏が治めたとこ。

宿南氏の嫡流は、朝倉氏。

①開化天皇の皇子彦坐命の子孫とする系図

②孝徳天皇の皇子表米親王の子孫とする系図(『朝倉始末記』『赤淵大明神縁起』、但馬の日下部系図など)


表米親王といえば、養父神社境内社の


迦遅屋神社。別名「猫の宮」の

祭神は、奧津彦命、奧津姫命、猿田彦命、表米親王。


表米親王の兄は、かの有馬皇子。

但馬国に流された表米親王の子孫が日下部姓を賜り、但馬の豪族として栄え、平安時代末期の宗高が養父郡朝倉に住して朝倉氏を称します。

つまり養父は、戦国時代に越前の覇者となる朝倉氏の発祥の地。


朝倉高清(養父神社との関わりは後日)を祖とする朝倉氏は、八木氏、七美氏、宿南氏、寺本氏、田公氏等を称し但馬一帯に根を張ることに。

「八木氏系図」には宿南氏系図が併記されるほど八木氏と宿南氏は密接な関係。

養父市には、朝倉城址、八木城址が良好な状態で残ります。


八木城址そばの今滝寺仁王門。

⇒⇒八木氏菩提寺・今滝寺の仁王門と金剛力士像


『掃部狼婦物語』の伝承がある宿南には、この宿南氏が南北朝期に山城を築城。(「城郭放浪記」様より宿南城

そんなとこ。


《『掃部狼婦物語』》

編纂は文化・文政期(1804‐1830)。

分類としては、報恩物語と異類婚姻談。主役は狼くん。


わん、言うなー(T_T)


室町時代。妙見山参拝を終えた伯州の修験者、威妙院。



宿南で狼に襲われ、宝剣「天国(あまくに)の短刀」で防御。

おデコを斬られた狼は宝剣を奪い、「かもん、かもん」と言いつつ退散。(×come-on)



修験者が「かもん」をヒントに探し当てたのが、田垣掃部(たがきかもん)。

後妻・牧女が寝込んでおり、あやしい。

聞けば、田垣掃部の先妻・綾女に罠にかかっていたところを助けられた狼がおり。



綾女の死後、田垣掃部が迎えた後妻が、悪女。
沢右衛門の送り込んだ後妻が狙うのは田垣掃部の命とお家乗っ取り。

狼くんは、諏訪明神のご神徳で、人間(♀)にへんしーん。

悪女の後妻と沢右衛門を殺し、さらに悪女に奪われた宝剣を探していたら、修験者が持っていたので取り返したの、ごめんなさい、と。



正体を知られたからには、ここにはいられないです、と別れを告げる牧女@狼。

田垣掃部も息子も必死に引き止めますが、神代の頃からのルールなの、と、姿を消します。

田垣掃部親子が家の床下を調べると、そこには、額に傷のある狼の骸が横たわっていました。



狼くんの恩返し、おしまい。


さてこの『掃部狼婦物語』には後日談があり。

田垣家に戻った宝剣「天国の短刀」は、日光院に奉納されます。

そう、明治の神仏分離で名草神社に乗っ取られた形で妙見山を追われた、あの日光院です。

宝剣を持っていた修験者威妙院は、妙見山参拝を終えたところでしたね。


もしもし。


こらこら。もうすぐ出番ですよ。


つづく。


特別出演:津田八幡神社(香川県)の狛狼くん

参考文献

『掃部狼婦物語:但馬宿南の狼伝承』(兵庫県八鹿町ふるさとシリーズ第3集/八鹿町教育委員会/1990.3)
※八鹿町は2004年4月1日に八鹿町、養父町、大屋町、関宮町 が合併して養父市

「武家家伝」様より「宿南氏」
http://www2.harimaya.com/sengoku/html/syuknami.html

「武家家伝」様より「朝倉氏」
http://www2.harimaya.com/sengoku/html/asakra_k.html


いつも応援いただきありがとうございます。
宿南には、掃部屋敷という所に掃部之塚があり、『掃部狼婦物語』が史実と物語が混在する伝承として残っています。赤ずきんちゃんや三匹の子豚では悪役バリバリの狼ですが、こちらでは全く違いますね。助けてもらった恩返しをするなんて、いい子じゃないかー、狼くん。

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