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新しい能楽堂、西宮能楽堂へ行ってきた

こんにちは。

趣味がが能楽なんですが、お休みのときは出来るだけあちこちの舞台へお邪魔して、いろんな先生の舞台を拝見するようにしております。

能ってのは、謡本と型付があって、定められた規範のなかでしかできないと思われがちですが、実はふれきしぼー。

シテ(主役)の考え方、捉え方で、いろんな演出が出来るんですよ。

で。

今日はお休みいただいたんで、西宮市鳴尾に昨年末に新しくできた西宮能楽堂へお邪魔しました。


駅からほどなく、こんなもだーんな建物がありまして。


設計を担当された方がデザイン履歴にきっと載せる斬新な能楽堂。

お屋根のてっぺんの窓から自然の光が入るようになってます。


中から見るとこんな感じ。


おめめに眩しい新品ぴーん!な舞台です。


建物in建物が、能楽堂。

かつては屋外にあった能舞台。

武家の式楽から芸能へと変遷する中で、雨天でも決行できるように屋内へ入れました。公演の確保のためですね。

んで、建物in建物の形が増えました。

手前が目付柱。この柱付近を「角(スミ)」といい、目印になる柱です。

面を付けることで果てしなく限られる視界のなかではこの柱ってとっても大事。


何を叫んでるかと言うと、この金具。


歌舞伎でも有名な「道成寺」の鐘を釣るための金具なんです。

数百キロある大きな鐘を釣り上げ、シテにかぽんっと被せる、いや、シテが鐘に飛び込む道成寺は、シテ方にとって卒業証書といわれるたいへん重要な演目です。


某所の鐘のスケルトン

でっかくて重たい鐘を釣ったり落としたりするんですから、古い舞台では、天井がもたない、あるいは、舞台が抜けちゃうかも?な心配があって、道成寺を公演できる能舞台は限られているそうです。

それはさておき、新しい能楽堂。


わざと白い壁にして、プロジェクターで詞章や参考図面を写し出すことができるよーになってます。

国立文楽劇場では、舞台の上に字幕スペースがあり、詞章を字幕にして写し出しており、初心者にはわかりやすいです。(慣れると、邪魔だなぁと思う人もいます)



どうしたら初心者でも楽しめるのかなぁー?と、オペラや歌舞伎、文楽等で導入されてるのが、イヤホンガイド。



舞台の解説をしてくれるありがたいサービスですが、能の場合は数週間にかけて上演される前述の公演と異なり、たった一度限りの上演なんです。

そう、まさに「一期一会」。

イヤホンガイドでは通常、録音したものを繰り返し使用しますが、能ではそれができず、というか、一回限りなんで録音せずに生放送。贅沢ですね。


で、今日の演目は。


杜若でした。

藤原家の宝物の二条后をさらってカケオチしようとした業平が、事件発覚により咎められ、都から旅に出た(「伊勢物語」の東下り)道中、三河知立の八橋でのお話。


きつはた つつなれにし ましあらば るばるきぬる びをしぞおもふ

か、き、つ、は、た。

です。

このような言葉遊びの入ったものを「折句」「折句和歌」といいます。

で、「杜若」の主役は、杜若の精。

なんで杜若と業平が絡むのかというと。

業平は平安時代に既に「歌舞の菩薩」と称えられており、その功徳により杜若の精が成仏したというのが能「杜若」のお話。

シテのご当主は普段からとても朗らかで優しくて、大好きな先生なんです。お目目、ハートで拝見しました。うふふ。

とてもきれいなお姿で素晴らしかったです。また拝見したいです。


帰る間際にやっと気付きましたが、通常は松だけの鏡板が松竹梅になってました。
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お稽古でした。話題は大槻能楽堂の乱能。

じめじめじめじめ…っと、関西が梅雨入り。

発表会後はじめてのお稽古だったので、お礼のご挨拶。


お稽古、おさぼりです。


乱能を観てから先生とお話するのもはじめてだったので。

→前回の乱能記事
大槻能楽堂改築30周年記念乱能を爆笑鑑賞




文蔵先生がグルメさんなので、それはそれは美味なお弁当とおつまみでした。
私のお隣の粋なおばさまは、日本酒をお召し上がりで。
知らない方でしたが、楽しくお話しながら鑑賞しました。

乱能は客席からの「よっ!日本一!」的なお声とか、普段はありえない客席から舞台の先生への花束贈呈とか、おけーなのです。


梅若玄祥先生とか、大槻文蔵先生とか、善竹忠一郎先生とか、大倉源次郎先生とか、藤田六郎兵衛先生とか、福王茂十郎先生とか、んもう、すごくて。

あまりに本気で素晴らしい舞台なので、楽しく過ごす乱能のはずが、少しお喋りしたら舌打ちされるような、しーんっとした雰囲気でして。

それは、本業が素晴らしいからこそなんやでぇー、っとうちの先生。

ふむ。


最初からふざけ過ぎてるのは、面白くないのかなぁ。

今回初めて、お顔を歌舞伎の如く白塗りにされた方を観ました。
土蜘蛛の胡蝶の某先生です。びっくりしました。客席の空気を読んで、むっちゃうけてる方を向いて笑顔と会釈をくださいました。

でも、本業も素晴らしいんだぞぉ。


違います。


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大槻能楽堂改築30周年記念祝賀乱能を爆笑鑑賞。

大阪の大槻能楽堂改築30周年記念祝賀乱能を鑑賞しました。
大槻能楽堂…何十年通ってるやら。

で。乱能って?

能楽では囃子方は囃子(小鼓は小鼓、笛は笛)、シテ方はシテ、というように各専門分野に分かれた専業制です。

乱能では、シテ方の先生が狂言したり、囃子方の先生が装束を着てシテ方をしたりと、専門外のことをします。

普段の能楽とは異なり、先生方が楽しくアドリブ入れたり、ハプニング続出したり。爆笑やら拍手喝采やら。マニアにはたまりません。

大阪の観世流では、20年ぶりぐらい。10時半の開場前に行ったら長蛇の列。一番の方は、なーんと、札幌からお越し。朝7時半に並んだと。ひゃー。


大槻能楽堂改築30周年記念祝賀乱能ということで、鏡割りもありました。ご当主の大槻文蔵先生がおでましに。


うえーん。立ち位置間違えたー(T_T)

文蔵先生の謡もお姿も呼吸も全てを、お玄人の先生方が憧れて目指す関西の宝です。せんせー!




先生の舞台、まだまだいっぱい拝見したいから、長生きしてくださいねっ!!


お昼のお食事、おつまみ(柿ピーじゃなく、お上品なお惣菜詰合せ)、お酒、甘味(中将餅)がおふるまいいただけて、パラダイス。しかも本日限定で見所(けんしょ。客席のこと)が飲食可。

非常にマニアックな話なのですが。

能楽「土蜘蛛」で、前シテがお笛の藤田流家元の藤田六郎兵衛先生、後シテが大倉流小鼓方家元の大倉源次郎先生。うふふ。
照れる六郎兵衛先生のお顔と美声とか、源次郎先生のお姿とか、ああー、幸せです。

能楽「俊寛」は、小鼓が梅若玄祥先生、大鼓が文蔵先生。お二人が並んで座ってるだけで、うひゃっと笑顔が。
おシテは、ワキ方福王流家元の福王茂十郎先生。それはそれは重厚な舞台で。乱能、素晴らしい。

一番好きだったのは、狂言方の善竹隆司先生と小笠原先生の舞囃子、猩々乱。とてもとても端正なお姿でしたの。

もっともーっと書きたいのですが、乱能はその場で楽しんで、あとは忘れるのが粋ってもんで。なーいしょ!


あ、私の先生?
もちろん(?)、お笑い担当。先生、立ってるだけで笑いをとってましたの。私のお腹はよじれてぐにぐにです。

そんな先生が、好きです。
いじられキャラな先生が、大好きです。


大槻能楽堂は、こんなものが徒歩3分。






信長が戦った石山本願寺、大阪夏冬の陣。
実は難波宮跡を踏んづけて戦ってたんですけど…。


ま、いっか。


皆様の応援のおかげで更新頑張れます。乱能は、歌舞伎の俳優祭のようなものかしら。楽しかったです。文蔵先生の笑顔が見れたので、それだけで、幸せです。だって舞台では笑顔じゃないもん。
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おまけ

文蔵先生追っかけの私に配慮して、うちの先生が文蔵先生を舞囃子の地頭にしてくださり。有頂天のまま、舞いました。笑顔を隠すのが大変でしたー。

えへへへ。素人、ばんざーい。

鬼女か否かの見分け方は装束にあり。「安達原」島熊山桜能

こんにちは。

前回は鬼女が現れたときの内緒の言葉をお伝えしました。
今日は、鬼女の見分け方。

女の鬼の場合は、装束に決まった模様があります。それは…


お魚のうろこだったら、ファンタジー。ここは蛇に象徴される女の情念をご想像下さい。むーん!

で。

この模様のあるものを着ていたら、実は鬼女なのです。しかし、



こんな風に着てくれたら簡単なんですが。



襟元しか見えない時もあるかもしれません。

「安達原」では、こんな感じ。


よーくよーく観察して、どこかにうろこ模様があったらすぐに逃げましょー!!


これは北条さんちの三つ鱗紋。北条時政に江ノ島弁財天の神託を告げた大蛇が残した鱗みっつ。逃げなくても大丈夫。

能楽には、「女の鬼」と「男の鬼」がいて…というのは、それはまた別のお話。


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明日は会社です。夢の中に旅立たないようにしなくちゃ。

「安達原」で鬼を祈り伏せる言葉の数々・島熊山桜能

こんにちは。
今日は、鬼女に遭遇したときの内緒の言葉をお伝えしまーす。


もしあなたが、こんな鬼女に追いかけられたら…。

怖くて逃げてもいいのです。だって修験者だって、「きゃー」って逃亡したんですから。


はい。冷静になりましょう。


以下、「 」内は「安達原」の詞章。

まず、五大尊明王を勧請します。

「東方に降三世明王」「南方の軍茶利夜叉明王」

「西方に大威徳明王」 「北方に金剛夜叉明王」

「中央に大日大聖不動明王」


五大尊明王案内マップ


次に、陀羅尼(呪文)を唱えます。


「おんころころ せんだりまとうぎ」(薬師如来に祈る呪文)

「おんなびら うんけんそわか」(大日如来に祈る呪文)

「うんたらかんまん」(成就・吉祥の意味。呪文の結びに唱える)




次は、不動明王が衆生を救う誓いの四ヶ条。

「見我身者。發菩提心」(我身を見る者は 菩提心を発せん)

「聞我名者。断悪修善」(我声を聞く者は 悪を断ち善を修めん)

「聽我説者。得大知恵」(我説を聴く者は 大知恵を得ん)

「知我心者。即身成佛」(我心を知る者は 即身成仏せん)



「即身成佛と明王の緊縛にかけて。責めかけ責めかけ祈り伏せにけり。さて懲りよ。」

すると。

なんということでしょう。。鬼女が弱っていくではありませんかー。仏の力は強いのです。


鬼女は、安達原の黒塚に隠れ棲んでいるうちに浅ましい姿となった自分が恥ずかしい、と言い残して夜嵐のなかに姿を消しました。


成功です!

あなたも鬼女退散の道を極めましたね!

これで山城攻めもばっちりです。いってらっしゃーい!


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お城に行きたい病になってます。石が見たいです。石が。

島熊山桜能で「安達原」鑑賞。美辞麗句だけでない言葉。

大阪北部の島熊山で「島熊山桜能」と名付けられた催しに行ってきました。

お寺のお参りする所に敷舞台を設置して、屋外で演能。夏なら薪能ですね。春だから桜能と名付けられたのかな。


以前はサクラサク季節にされてたのですが、観ている方は寒くて寒くて。その時は寒すぎて気分が悪くなり、お寺のトイレのぬくぬく便座で暖をとりましたの。


曲は「安達原」

陸奥の国の安達原(福島県安達太良山麓)で修験者と山伏一行が夜になってしまったので、無理矢理おばーちゃんちに頼み込んで泊めてもらう。

「えーか、私の寝室を見たらあかんで。えーな?」「ほんまにあかんで」「あかんで!」っと再三再四念を押して、夜なのに山へ薪を拾いにいくおばーちゃん。

んなこと言われたら、見てしまうやーん?

見た。

「ぎゃーーー!!」

おばーちゃんの部屋にはおびただしい数の死体が天井まで山積み。

「わー!あれが安達原の黒塚に住む鬼女だったんだー!わー!」
修験者一行、脱兎の如く逃走。

「みぃたぁなぁー!!」っと鬼女の姿で追っかけてくるおばーちゃん。



修験者達は必死に祈り伏せます。やがて鬼女は弱りはて、夜嵐の中へ姿を消しましたとさ。

おしまい。


能楽の詞章というと、「花前に蝶舞ふ粉々たる雪。柳上に鶯飛ぶ片々たる金。花は流水に随って香の来る事疾し」(熊野)など美しい言葉を連想されると思いますが、この「安達原」で修験者一行が見たときの描写が…。

「膿血忽ち融滌し。臭穢は満ちて膨張し。膚臓悉く爛壊せり。人の死骸は数知らず。軒と等しく積み置きたり」(安達原)

(ノウケツたちまちユウテキし。シュウエはみちてボウチョウし。フニことごとくランネせり。以下略)

うえー。

こんな詞章も、曲によってはあるのです。「うわぁー」と思います。だけど、だからこそ面白い…かなあ?

最後に本日の教訓。

何にもいいことありません。


ポチ、していただけたら、安達原を枕元で謡います。ノウケツたちまちユウテキし…
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